今から、約50年前。 京都の東映撮影所で、ある若者が早朝から深夜迄、大勢のベテラン撮影スタッフの元、主演者 として苛酷な撮影に挑んでいた。

 その作品が、東映初のカラー特撮テレビ時代劇、仮面の忍者赤影である。 そして主演者の若者こそ、誰もが愛した『赤影』坂口祐三郎である。当時25歳初の主演作品であった現代ドラマと異なり時代劇は予算は勿論、撮影時間がかかる。 何故なら当時の特撮部分の作業は全て手作業だったからである。 二話の撮影に要した時間は、なんと2カ月。 今後スピードアップしなければ毎週の放送には到底間に合わない。 撮影スタッフの間に緊張感が走る中での撮影当時若かった新人の坂口にとってそのプレッシャーだけでも充分過酷なはずだがそれに加えて、更に赤い仮面を着けてのフルタイム拘束苛立ちや焦りが自然とスタジオの中にも現れる。

 後年彼が語った話として「注目を浴びれば浴びる程ヤル気が出ると言われたけれど…。初主演、周りはベテラン陣、偉い人も来てる。 想像を越えるプレッシャーの中で、仮面で視界が遮られ、本来の動きが出来ない...。 苛酷な状況で睡眠不足にも襲われた中で、唯一取り組めた理由なんて、正直言ってわからな かった」と言っていた。

 でも今の私には彼の取り組んできた事への価値がはっきりと分かる。 何事も理由が全てではないからだ。理由がないと意味が無いのではない。 むしろ、理由が分からない中でも、彼が必死で取り組み魂を捧げた事により、この『赤影』 という作品”意味を持ち人々の心に残したいとい『理由』が出来たからである。若い彼には酷な状況だったことは間違い無い。だが、そんな彼の、ひたむきな姿に多くの人が心うたれたことは事実である。だからこそ彼のし遂げた事には深い「意味」があると信じている。

坂口祐三郎の素顔 vol.2

若きヒーローの苦悩

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